Reality of Food|食の実在

例えば、あなたの人生がこの先そう長くないと知ったら何を食べたいですか?

または、あなたの家族や大切な人だったら、何を食べさせてあげたいですか?

先日、ある企業の社員向けのレストラン運営を担当するチームと一緒に社員向けにNomadic Kitchenのイベントを開催しました。その会社は、社員や社員の家族の30年後の健やかな暮らしを考え、社員に毎日の食事を提供しています。

昨今、食に関するテレビ番組や雑誌を多く見かけ、「食って流行ってるよね〜」と言われることも少なくありません。同時に、ただそれらを見るだけで満足してしまい、食そのものがどんどん「抽象的」な存在になってきていると感じます。

食の「実在」とは何なのか?

それをみんなで感じてみたくて「“THINK DISH" by Nomadic Kitchen | 考えすぎて食べる日」というテーマで集いを催しました。今回は、料理人たちの発案で、今までの私たちの活動で訪れたことのある青森(魚)、神奈川(八百屋)、和歌山(醤油)、香川(炒り子)、鹿児島(豚)の作り手の方々にお越しいただき、参加者がワークショップ形式で料理人と一緒に素材にふれ、対話し、食べながらすべての感覚を使って考えました。

鹿児島の「ふくどめ小牧場」の福留さんには、大切に育てたサドルバックポークの50kgの半身をそのまま丸ごと持ち込んでいただき、目の前で料理人と一緒に解体し、参加者にも大きな切身を一緒にさばく体験をしてもらいました。

参加者からは「雌ですが雄ですか?」「何歳ですか?」という質問が飛び交いました。生まれてからたった8ヶ月の大きな雌の豚の半身を目の前に、参加者からは「命を大切に頂かないとと思った」などの声がありました。

豚の半身の解体以外に、もろみから絞る醤油の味比べ、炒り子出汁の取り方、伝統野菜の話を聞きながらのピザ作り、青森の未利用魚の話や魚のさばき方など色々な体験をしていただきました。

今大切なのは、なんとなく毎日過ぎていく食べることに対して「リアリティ」を取り戻すことだと思っています。

日本には、とても素晴らしい食文化が沢山存在しています。その先には、「機械」じゃなくて「人」がいます。でも一方で、工場で大量に機械によって製造される多くの食べ物。意識しないと私たちの暮らしのすべてが、そういった商品としての食べ物でうめつくされてしまいます。そして、食べたい、食べさせたい時には、その手で作られる食文化たちは、もうないかもしれません。

でも、みんなが少しだけ意識することで、大きく変わると思っています。
なぜなら、それは毎日、毎食のことで、みんなのことだからです。

Nomadic Kitchenが大切にしているのは、日本各地の手で作られた食文化とその文化を守る作り手の方々です。食べることすら「抽象的」になりつつある現在の暮らし。食にまつわる様々なことを、みんなでOPENに学び、体験し、食べて、語り合う。Nomadic Kitchenを食のリアリティを「みんな」でとりもどす活動にそろそろしていかないとと思っています。

photo by 森本 菜穂子